フツーに暮らしてますけど

いくつになっても「箸がころんでもおかしい年頃」のままで生きています。


日常のちょっとしたお話です。

褒めてくれる人

初めてお会いしたのは9年ほど前。


主人がお付き合いしている方とのことでご挨拶をさせていただきました。
50代後半の会社経営者です。


その二日後、その方の副業のほうがどうも芳しくないので、私に手伝ってもらえないかとのお話がありました。
その頃、私は自営業をしていましたが、趣味程度のものでしたので、主人に了解を得てお引き受けしました。


今までそうとうワンマンにしてきたらしく、その結果、社員のやる気がなくなっていき、接客態度にも顕著にあらわれはじめ、数字が落ちていき、そこで経営者がまた怒鳴るという悪循環だったようです。


若い頃に立ち上げた本業はどうにか順調に伸び、一代で大きな資産を作った様子でしたが、そちらでも怒鳴ってばかりだったようで。



そんな人が、「全部任せるから!」と言ってくれたことで、
「よっしゃ!やってみる!」となった気がします。


みんなが楽しく働ける場は絶対伸びる!と信じて、最初の半年間は全て仕事のことだけ考えて突っ走ってました。
変えていくことの喜びがあって、やりがいを感じて、ただただ楽しくて、
眠ることが大好きな私が、睡眠時間も惜しいくらいになっていました。


そうなれたのは、任せてくれた方が私を信じてくれたからです。
怒鳴る人と聞いていた人が、常に


「ありがとう!ありがとう!」


と言い続け、たくさん褒めてくれたからです。


私とは11歳の年の差でしたが、まるで父のような存在でした。


ワンマンで誰の言うことも聞かない人、誰かがなにか意見を言うと怒鳴りちらすどうしようもない人。
けれど、私は怒られた記憶は一度もなく、私にとってはいい人でした。


その人の奥さんも息子さんも娘さんも、みんなが手に負えないと言っていました。


そのワンマンな人が病魔に侵されたのは4年ほど前です。
大きな体がみるみるうちにやせ細りました。


「今日スーパーに行ったら、試食のお姉さんに『そこのおじいちゃん!』って呼ばれたよ』と笑って話していましたが、60歳過ぎたばかりで80歳ぐらいに見えることはそうとうショックだったに違いないと察しました。


生い立ちやいろんな話をよく聞きました。
誰にも愛されていないのではないかという不安も聞きました。


「誰かに愛されることを望むより、自分が人を愛することで幸せになれると思いますよ」


と私が言うと、


「そっか^^俺は誰をも愛してこなかったからな~」


と笑っていました。


実は情が深い人なのだということを私は知っています。
いろんな人のことを救おうとしていたことも知っています。
でも、素直に上手に表現ができないのだということを知っています。


常に本を読んでいる人でした。
わがままでたくさんの敵を作った人。


1か月ほど前に私の職場に来たときは
一人では歩けず、私が肩を貸し一緒に歩きました。
「みんなを呼びましょうか?」
と言うと、
「こんなみっともない姿を誰にも見せたくないから」
と言うので、私だけが少し話し、車の所に戻るときにも支えて行きました。


その時、車に乗る前に空を見上げて


「みんなで海に行きたいな~」


と細い声でつぶやいたので


「行きましょうね。みんなで行きましょう」


と、言ったのですが・・・・。


それが私との最後の会話になりました。


9月14日の夜中だったそうです。
私に息子さんから電話がきました。


故人の意思で、本当に家族だけの家族葬に、
私を呼んでくださったことに心から感謝しています。


歳を重ねると、滅多に褒めてくれる人なんていません。
褒めたら大喜びして頑張る私をきっと笑いながら見ていたのでしょうね。
褒められることが本当に楽しみでした。


全く経験のなかった業種の仕事もおかげさまでずっと楽しくできています。
ありがとうございました!
これからは自分で自分を褒めていきますね。


さ~て、今日もみんなが楽しい職場目指してがんばりますよ~^^
私!えらいね~^^